桶谷そとみのアドバイス(1) 生まれてから1ヶ月目まで
お産がすんだ後、母体は急速に母乳の準備を始めます。
けれども、乳房はまだかたくて、乳腺も狭められがちです。また、赤ちゃんも母乳を飲む力が弱くて、なかなか上手に飲めないかもしれません。
特に乳頭が十分に発達していない乳房は、赤ちゃんの飲み方が上手になるまでは努力が必要です。
しかし、この時期はいわば双方の歩み寄りの時期ですから、母乳育児に慣れることに重点をおいて、あせらず、ゆっくりと暮らしたいものです。母乳の量はそんなに多くないのが普通です。
母乳の質は初乳からだんだん良化して、黄色みも薄くなり、赤ちゃんの消化力を促す乳汁になってきます。
このために、赤ちゃんの便の回数がやや多くなりますが、心配は要りません。
産褥期の乳房は急速に状態が変化するので、乳房の観察がとても大切であり、十分に考慮して手技を行わなければならないからです。赤ちゃんは飲みやすい感触の乳頭になるのを待っているのです。
お母さんは、催乳感覚を催すたびに赤ちゃんにお乳を飲んでもらい、いつも良質のお乳が出るように心がけて下さい。母乳育児が成功するかどうかは、最初の1ヶ月がカギなのです。
それに、この頃は、だれかに家事や育児を手伝ってもらっていたり、実家に帰っているかして、恵まれた状況にあることが多いので、是非その間に母乳育児の基礎を固めて下さい。
この時期の赤ちゃんは、母乳を飲んでいる時以外は、たいてい眠っていますが、時には一定の時間に起きて不機嫌になる赤ちゃんも見かけます。お母さんにとっ て、たぶんいちばん大変なのは、夜中の授乳でしょう。3時間おきに起こされるというのは、ちょっと考えるととても苦痛なように思えますが、母乳が本格的に 分泌するようになれば、むしろ赤ちゃんに飲んでもらわなくては苦しくて眠れないというようになるのです。
そのためには、初めの頑張りが大切。
是非、目覚まし時計をかけてでも、2時間半~3時間ごとに起きるよう頑張りましょう。
桶谷そとみのアドバイス(2) 生後1~2ヶ月
母体もぐんぐん回復し、赤ちゃんは順調に育つ時期ですが、1ヶ月過ぎから赤ちゃんの神経の芽生えがはっきりしてきて、よく泣く赤ちゃんも出てきます。
どちらかというと男の子に、このような過敏性の赤ちゃんが多いように見受けられます。
また、妊娠中やお産後に乳房のトラブルや他の病気をしたお母さんから生まれた赤ちゃんにも多いようです。
よく飲んで、よく寝て、よく太る赤ちゃんは、楽なので人気がありますが、こういう赤ちゃん、特に夜中にぐっすり長時間眠る赤ちゃんは、病気に対しての抵抗力が乏しい傾向があるように感じられます。
赤ちゃんが不機嫌になる時間は、1日に3~5時間もあります。
よく泣き、口ばかりあけて、いかにもお乳を欲しがっているように見えます。
抱くと一応は泣き止みますが、寝かせるとすぐにまた泣き、そのため抱き癖がつくこともあります。
泣くのは成長するための、1つの生理的現象でもあると思われます。
こういった神経の芽生えと前後して、発達の面では、赤ちゃんの目は物がよく見えるようになります。
お母さんは床上げをして、毎日忙しく働くようになりますから、乳質変化が目立ってきます。
どんなに忙しくても、催乳感覚のある時に定時刻授乳をしましょう。
同じ頃に赤ちゃんもお乳を欲しがるようになってくるはずです。日一日と飲む量が増えてきます。
両乳房の飲ませ方、抱き方に注意し、乳頭をゆがめないように、また乳房の奥まで震鐙させて飲むように注意します。そうすると分泌作用も良好になります。
時々湯冷ましをスプーンで与えて、口の渇きをうるおしてあげます。
もし、乳汁不足を疑って混合栄養にすると、赤ちゃんはこの時期から色々変調が目立ってきます。
特に乳質の悪いまま混合栄養に入ると、この傾向が強いようです。
たとえば目やに、ほおや頭の湿疹、口内炎、鼻炎、軽いせき、吐乳、下痢、発熱、おむつかぶれ、毛がさか立つなどの症状です。もっとひどくなると、体形が逆三角になるように見受けられます。
足の交差や頭骸骨、顔部位の輪郭の変化、脚部、手腕の発育のおくれもあります。股関節の開き具合を調べて、脱臼の疑いがある時は、専門家の診療を受け、服オムツを当てておきます。
同時に治療手技で乳房を整え、乳質を良くして飲ませるよう心がけます
不定愁訴と桶谷式手技のアドバイス
Iさん 乳房は健康のバロメーター
先日は暑い所丁寧に診察していただき、大変有難うございました。桶谷先生に診ていただいてすぐに家に帰ったのですが、自分の体が虚脱状態におちいった感じになり少し横になっていました。
しかし、眠くはないので体を起こしてみましたが、頭が、ボーとしてなにか背中にポッカリ穴があいた感じなのです。翌日は、体全体がすっかり軽くなった感じで、特に右半身部分が快調でした。
思えば、上の子が生まれて以来3年8ヶ月も背中のこりというよりこぶを持っていたようなものでしたから虚脱状態となったのも当然でしょう。
診察前 |
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診察後 |
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以上の通り、今まで悩まされていた肩から腰にかけてのこりは、他でもないおっぱいからくるものであること、それがわかっただけでも気持ちがすっきりいたしました。治療していただき本当にありがとうございました。
Iさんへ
乳房は女性にとって生殖器同様、体の重要な機構で、妊娠、分泌によって乳汁流通の機能を司ります。
生まれた赤ちゃんにとっては、生命を維持するのに最も貴重な栄養源となる母乳を湧き出させる所ですから、赤ちゃんの生命の出発点とも言えるでしょう。
このように大事な器官ですから、ここに、たとえ少しでも障害があってはなりません。
また赤ちゃんだけでなく、乳房の故障は母体の神経系統や循環器系統に影響を与え、お母さんの体も不健康にしてしまうのです。
このような意味で、乳房内の少しの異常も軽視は出来ません。
育児を終え、数年、10数年後にやってくる更年期に、更年期障害として、現れる肩こり、神経痛などの様々な症状は、乳房の障害と深く関連しているのです。
また、育児中の乳房管理に誤りがあったり、乳房の生殖機能を無視した授乳の仕方をしていたりした場合、あるいは断乳の方法が適切でなかった時等も、更年期障害が多発することを見るにつけ、乳房管理の大切さ、必要性を痛感させられます。
更年期の不定愁訴の方に状態に適合した手技を施すと、体全体が軽快になり、冴えなかった気色にも生気が出て、いままでの症状が一度にかき消されてしまうようだと、思わず喜びの声をあげられるのを見ても、全身の健康と乳房との関連性が実に密接であることがわかります。